アミティの初恋~同人小説~

私、アミティ! プリンプタウンにある魔導学校の生徒だよ。成績はイマイチだけど…でも学校が好き! みんなが好き!
今日もこれから学校なの。がんばらなくっちゃ! 周りのみんなみたいに器用に魔術を使いこなせなかったり、アコール先生には時々怒られたり、凹むこともあるっちゃあるんだけど、なんだかんだ言って毎日楽しい日々。こういうのを幸せっていうのかなぁ。
でもね、最近1つだけちょっと気がかりなことがあるんだ。
「おはようアミティ」
あの声だ。朝一から学校ですれ違うあの人の姿。
「どうしたのアミティ。ぼんやりしちゃって」
そう私に話しかけてきたのはシグ。相変わらず眠そうな顔をしてる。ちゃんと寝てるのかなって時々心配になるけど本人はいたって元気みたい。
「ごめーん! まだちょっと寝ぼけてるのー」
笑顔で答える私。…ううん、本当は寝ぼけてなんかない。頭は冴えてるの。
「そっか。ならいいんだけど」
そう言うとシグはすぐに他のクラスメイトのところに行ってしまった。あぁもうせっかく話をするチャンスだったのに! 朝こうしてすれ違う時以外にはあまり話す機会が無いから、顔を合わせたらたくさん話してやろうって色々ネタも用意していくんだけど、彼の顔を見ると全部吹っ飛んじゃう。いつもの私じゃいられなくなる。そう、気がかりなことっていうのは彼のこと。
いつからだろう、こんな気持ちにをシグに対して抱く様になったのは。ドジで鈍感な私でもそろそろ本当は気付いてる。こういう気持ちのことを恋って呼ぶんだって。昔誰かが言ってたもん。男も女も恋をすると幸せになる。だけどそれと同じくらいの悲しみもやってくるって。ただ学校で会えたっていうだけで胸いっぱいになるくらい幸せなのに、素っ気なく他の人と話し始めるとそれだけですごく悲しい気持ちになっちゃう。ちょうど正に今がそんな気持ち。そしてこうやって落ち込む度に気付くの。あぁ私ってばシグのことが好きなんだなって。でもあの人はそんな私の気持ちに気付いてるはずもなくて、いつもぼんやりしてるけど。ほんのちょっとだけ私の心を見抜いてくれてもいいのに。
「アミティどうしたの?」
授業中ぼんやりしてた私にリデルが話しかけてくる。
「ほら、またアコール先生に怒られるよ!」
やばい! 魔術の授業中で先生に当てられてたのに窓の空ボケーっと見てて何も見てなかった。
「アミティさん。先生の質問聞いてたかしら?」
うわぁ…アコール先生がビミョーに怒ってるぅ。こういう時の先生って怖いんだよなぁ。私のバカバカバカ! 全然質問なんて聞いてなかったよ…。
「アミティ、これだよ、これ」
困ってる私にシグが後ろから助け舟を出してくれた。
「答えは1番だよ」
「あ、ありがとう」
彼に小声でつぶやいてからすぐにアコール先生に答えを言った。
「…1番です」
「正解よアミティさん。ぼんやりしてるから授業聞いてないのかと思ったけどちゃんと聞いててくれたのね。嬉しいわ」
「あははははは…それほどでもっ」
「持つべきものは友ね。シグさんに感謝しないとね」
「えっ!? あ、そうですね…あははははは…」
ヤバっ。話聞いてなかったのバレバレじゃん! カッコ悪いなぁ私ってば…もうちょっとしっかりしなくちゃ。ただでさえ授業内容に付いていけてないんだから。でもシグに助けてもらえてラッキーだなって感じてる自分がいる。ちゃんとお礼を言わなくちゃと思って後ろを振り向いた。
「シグぅ。ほんとにありがと」
「持つべきものは友だね」
そう言って少しイジワルっぽく笑ってみせるシグの顔がキラキラして見える。なんかこういう瞬間がたまらなく大切に感じる。でも『友だね』っていう響きがどこかで重くのしかかるんだ。わかってる。わかってるけど、でもやっぱり私は彼が好きなんだ。
まだ1日は始まったばかり。空に向かって進んでいる太陽の光を浴びてシグが輝いてる様に見えた。